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がん幹細胞の話

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 従来、がん組織とは、増殖能力が異常に高まったがん細胞がモノクローナルに増殖した結果、出来上がった病的な組織であると信じられていました。一方、近年の幹細胞生物学の発展により、骨髄内の造血細胞はもとより、脳神経や乳腺を始めとする多くの正常組織は、ごく少数の組織幹細胞を頂点としたヒエラルキーを持った細胞集団から構成されることがわかってきました。がん組織も、この性質を継承しており、ヒエラルキーの頂点にあるがん幹細胞と、その娘細胞たちからなる前駆細胞に近いがん細胞、さらに分化したがん細胞からなる細胞集団から作られていることになります。
 がんは、DNAの病気です。組織幹細胞やそれに近い前駆細胞のDNAに傷がはいると、がん幹細胞になることがあると考えられます。がん幹細胞は、周囲にある正常細胞(ニッチ細胞といいます)を利己的にあやつって、自分自身が分裂増殖しやすい環境を作り出します。がん幹細胞が分裂して、がん幹細胞と分化したがん細胞になりますが、後者の分化したがん細胞は、一過性に非常によくふえ、大きながん組織を作ると考えられます。

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 従来型の抗がん剤や放射線治療は、「がん細胞は増殖能が高い」という従来の考え方のもとに開発されてきたため、よく増える細胞を死滅させることはできます。しかしがん幹細胞の分裂自体はそれほど早くはないこと、また、ストレスに耐性であることから、がん幹細胞を死滅させることは難しいと考えられています。そのため、大きい腫瘍は一旦消失したかのように見えますが、実はがん幹細胞が生き残っている可能性があると考えられます。しかし、ニッチ細胞もない状況で、がん幹細胞は分裂を一旦はやめ、冬眠します。そして、何年かのち、何らかの刺激によってDNAに新たな傷がはいると、がん幹細胞として再活性化し、ニッチ細胞をあやつり、大きな再発がんをつくると考えられます。
乳がんは、初回治療から20年経過しても、尚再発のリスクがあると考えられています。これは、再発のもととなるがん幹細胞となりえるがん細胞が体内に残ってしまっていたからと考えられています。

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 加齢などの影響により、どんな細胞のDNAにも傷ははいります。老人の正常組織の細胞のDNAには、多くの傷がはいっていることも知られています。それでは、DNAの傷以外に、がん幹細胞化の引き金を引く原因があるのでしょうか?近年の研究より、その引き金は、組織におきた「炎症」であると考えられつつあります。
乳腺組織は、女性ホルモンの刺激を受け、炎症が発生しやすい環境にあります。炎症が発生すると、血管から白血球やリンパ球などの血液細胞や免疫細胞が乳腺組織にやってきます。組織の隙間をうめる間質細胞も反応します。そのような炎症環境中で、がん幹細胞が誕生しやすいことがわかってきました。がん幹細胞は、炎症環境中で、静かで分裂しない「静的」がん幹細胞から、分裂してどんどん増殖する「動的」がん幹細胞へと変貌していくと考えられます。

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